さまざまな理由で高校を辞めることになってしまった場合、なんらかしらの形で高卒の資格を取得したいと考えると思います。
そこで候補になるのは定時制高校、通信制高校、高卒認定試験になると思います。
しかし、いずれもなじみのある人は少ないため、
「定時制高校と通信制高校の違いがわからない」
「高卒認定試験は高卒と同じなのか」
「どの進路を選んだほうが良いのか」
といった疑問が出てくるのではな位でしょうか。
そこで、今回は、
・定時制、通信制高校、高卒認定試験それぞれの特徴とその違い
・定時制・通信制高校卒業や高卒認定試験が、進学や就職に不利になるのか
・高校を中退した場合、高卒資格と高卒認定のどちらを取得した方がよいのか
上記について詳しく説明していきます。
目次
定時制高校・通信制高校・高卒認定試験3つの違いは?
ではさっそく、定時制高校、通信制高校、高卒認定試験それぞれの特徴とその違いについて解説していきます。
結論を言うと、定時制高校、通信制高校、高卒認定試験はそれぞれ違いがあります。
その違いがわかるように、それぞれについてわかりやすく解説していきます。
定時制高校
定時制高校といえば、夜間に学校に通って4年間で高卒資格を目指す学校と思っている人が多いかもしれません。
たしかに以前の定時制高校は昼間に仕事をしながら夜間に授業を受けるというスタイルが多く、結果的に全ての単位を取得するためには、4年間通学する必要があったケースが多かったです。
しかし、現在の通信制高校は昼間部・昼夜部・夜間部の3パターンの学び方があるため、さまざまな方法で通学することが可能となりました。
そのため、3年間で卒業単位の取得が可能な学校も増えてきています。
入学するためには、国語・数学・英語・面接の入学試験を受験し、合格する必要があります。
また、入学時期は4月が原則です。
登校日数は全日制とほぼ同じで、週5~6日です。
授業スタイルについては集団授業であり、学期ごとに試験を受け、合格点数を取得することで単位が取得できるようになっています。
通信制高校
通信制高校の場合、修業年数は3年以上と、他の学校と同じなのですが、学年という概念がありません。
そのため年齢を気にすることなく、高卒資格の取得が目指せる学校となっています。
また、登校日数については全日制や定時制のような決まりはなく、週1日しか通わない学校もあれば、全日制と同じように週5日間かよう学校もあります。
さらに、学校によっては年5日程度の合宿に参加すればよい学校まで様々なケースもあるため、お子様の状況に応じて通学回数を決めることができるのが通信制高校の大きな特徴の一つです。
入学試験は、書類選考・作文・面接の学校が多いです。
入学時期は4月、10月が多いですが、通年で転入生、編入生を随時受け入れている学校が多いです。
授業については、基本的には参考書などを利用して自分で勉強していくスタイルですが、動画授業や個別指導が用意されている学校があります。
また、全日制や定時制にはない、専門分野についての授業が用意されているコースもあり、その単位で高卒の単位に含めることが可能です。
高卒認定試験
高卒認定試験(旧:大検)は、正式には高等学校卒業程度認定試験と呼ばれており、文部科学省が主催する国家試験です。
年度内2回の試験が設けられており、8月と11月に実施されています。
科目数については状況によって異なりますが、多くの生徒が合計で8~10科目が合格できれば資格取得となります。
科目数は確かに多いですが、高卒認定試験は何度も受験することが可能です。
そして、一度合格点数をとった場合は、その科目についてはもう受験する必要がありません。
高卒認定試験に合格することで高校卒業と同等の学力があると認められます。
つまり、高卒認定試験に合格することによって、「高校は卒業していないけれども、卒業した人と同じ学力がある!」ということを示すことができます。
そのため、高卒認定試験に合格すれば、高校卒業者と同じように大学・専門学校への進学や資格の取得などができるようになります。
たしかに高卒認定試験は一番簡単に高卒資格を取得できるような気がしますよね。
しかし、そんなことはありません。
なぜなら、高卒認定試験に合格しても高校を卒業したことにはならないからです。
高卒認定試験は学歴としては認められていないため、合格しただけでは最終学歴は中卒(高校中退)となります。
つまり、高卒認定試験は大学や専門学校などを卒業して初めて意味のある資格になります。
進学をする意思がなく、最終学歴を「高等学校卒業」としたいのであれば、全日制・定時制・通信制のいずれかの高校を卒業する必要があります。
以下、定時制高校、通信制高校、高卒認定試験の違いについて、わかりやすく表にしたので、こちらもご確認ください。
【入学制度】
定時制 | 通信制 | 高卒認定試験 | |
---|---|---|---|
入学試験 | 国語、英語、数学、面接 | 書類選考、作文、面接 | なし |
新入学時期 | 4月 | 4月、10月
※通年入学可能な学校もある |
【試験期間】
8月、11月
|
転入・編入時期 | 学期末、年度末など決まった時期 | 随時 | なし |
初年度費用 | 公立:年7万円~
私立:年50万円~ |
公立:年5万円~
私立:年25万円~ |
【受験科目】
7科目以上:8,500円 4~6科目:6,500円 3科目以下:4,500円 |
【学習制度】
定時制 | 通信制 | 高卒認定試験 | |
---|---|---|---|
年数 | 3年以上 | 3年以上 | 最短4か月 |
学習制度 | 学年制 | 単位制 | × |
学習方法 | 教師による授業 | 参考書や動画授業を参考に レポート作成 | 独学
予備校等 |
個別授業 | × | ○ | ○ |
専門分野の体験コース | × | ○ | × |
学歴 | 高校卒業 | 高校卒業 | 中学卒業 |
【学校生活】
定時制 | 通信制 | 高卒認定試験 | |
---|---|---|---|
登校日数 | 週5日 | 自由
週1~5日程度/年5日程度の合宿形式/月2回の動画授業など |
× |
通学時間帯 | 夕方から(1日4時間程度) | 自由
午後からや土日のみも可能 (1コマ45~50分) |
× |
給食 | ○ | × | × |
【卒業後の進路】
定時制 | 通信制 | 高卒認定試験 | |
---|---|---|---|
大学進学率 | 12.79% | 17.68% | 24.9% |
専修学校・短大進学率 | 16.86% | 20.32% | 20.1% |
就職率 | 41.04% | 19.64% | 8.9% |
比べてみると定時制高校と通信制高校の違いは明確です。なんとなくで学校を選んでしまうと、後で後悔することになるので、その違いをしっかりと確認しておきましょう。
定時制高校や通信制高校卒業、高卒認定試験が進学や就職に不利になるって本当?
たしかに、いくら高卒資格を取得したり高卒認定試験に合格したからといって、全日制高校の卒業と同じように扱ってもらえるのかは心配ですよね。
ではここからは、定時制高校や通信制高校、高卒認定試験が進学や就職で不利になるのかどうかについて、解説していきます。
今回は高卒資格が取得できる定時制・通信制高校の場合と、高卒資格が取得できない高卒認定試験の場合に分けて解説します。
定時制・通信制高校の場合
先ほど説明した通り、定時制・通信制は全日制と同等の高校卒業資格となります。
そのため、履歴書にも”定時制課程“や"通信制過程"などと記載する必要もなく、面接官に知られることもありません。
ですので、進学や就職で大きく不利になることはありません。
ただし、全日制高校を中退して編入した場合、他の人よりも多く高等学校に通うことになる場合がほとんどなので、その年数でバレる可能性はあります。
その場合は、定時制高校や通信制高校に通っている理由を聞かれる可能性はあります。
とはいえその場合でも、しっかりとした受け答えができれば、ほぼ問題になることはありませんのでご安心ください。
ただ、特に就職の場合について1点だけ注意点があります。
現在は多種多様な生き方が認められているため、定時制や通信制高校について理解をしてくれる企業が多いのですが、中にはそういった学校について全く理解を示さない面接官もいます。
そうなると、定時制や通信制高校出身という理由だけで、
「勉強ができない人が行く学校なんじゃないか」
「ちょっと問題がある人が集まっている学校だろう」
などといった偏見を持つ人もいるかもしれません。
そういう点では、多少は不利になる可能性があるかもしれません。
ただ、そういった古い考えを持つ人が上司になれば、就職した後に結局辛い思いをする可能性が高いです。
なので、そういった方が面接官であった場合はむしろ落とされてラッキーと考えましょう。
高卒認定試験の場合
定時制や通信制高校と違って、学歴として認められない高卒認定試験の場合は、やはり不利となるケースもあります。
まず、進学に関していえば、一般入試についてはほぼ不利になることはありません。
諸事象あって高校は2年生のまま進級できず卒業していません。
留年&退学が決まった時点で高卒認定試験を受け始めて、高校は卒業するはずだった年の3月まで学費を納めて在籍して退学。
ギリギリで同級生と一緒に大学へ進学しているので、履歴書上はあまり違和感はないです。 https://t.co/dhcmWz464X— サト♣️暴力に怯えて生きる人生から脱却します! (@satomi20080125) June 28, 2021
しかし、高卒認定試験の場合、推薦入試を受験できないケースが多いです。
現在2人に1人がなんらかの推薦制度を利用して大学進学をしているため、その道が閉ざされてしまうという点では、不利と言わざるを得ないでしょう。
ただ、それ以上に不利になりやすいのは就職です。
繰り返しになりますが、高卒認定試験は合格できたとしても最終学歴は「中卒」のままです。
多くの企業が採用条件を「高卒」としているため、その時点で不利になる可能性が高いです。
ただし、社会において企業はたくさんあり、理念や採用方針もそれぞれ異なります。
また、最近は「高卒認定試験は高卒資格と同じですよ〜」という国からの呼びかけもあり、高卒認定試験を“高卒”と扱う企業も増えています。
引用:文部科学省「高等学校卒業程度認定試験合格者の企業等における扱いに関する 調査の結果について」
この点から考えると、以前よりは高卒認定試験からの就職もしやすい環境になったと考えることができます。
俺も中学の途中から不登校で高校は定時制だったけど、その定時も途中で辞めちゃった
高認とって就職はできたが— ライチ (@pIwILn2AoOuHehE) June 26, 2019
また高卒認定試験を取得して大学や専門学校などへ進学したい場合は、就職で不利になることはありません。
企業の多くは最終学歴しか見ていないからです。
https://twitter.com/StrelitziaNo02/status/1410998520446738434?s=20
ですので、最初から大学や専門学校への進学を希望しているのであれば、高卒認定試験でも問題なく就職できると考えてください。
定時制高校、通信制高校、高卒認定試験どれを目指せば良いの?
ここまで、定時制高校・通信制高校・高卒認定試験について説明してきました。
ただ、ここまで読んでいただいた人の中には、
「結局どこを目指せば良いの?」
と思っている人もいるでしょう。
では最後に、高校を中退してしまった場合は、定時制高校と通信制高校、高卒認定試験のどれを目指した方が良いのかを確認していきましょう。
結論としては、通信制高校への進学が一番良いです。
高卒認定試験は、先ほど説明している通り、学歴が残りません。
その割には、8科目以上の対策が必要となり、学習の負担も意外に多いです。
さらに、結局は大学や専門学校への進学が前提となるため、それらの試験対策を別に行う必要があります。
総合的に判断すると、高卒認定試験は学費が安くなることくらいしかメリットがありません。
たしかに高卒資格を取得できると考えれば、定時制高校でも問題ないように感じますよね。
しかし、定時制高校は原則4月にしか入学することができません。
また、学科試験が課されるため、学力が不安な方にとっては負担になる可能性があります。
その点通信制高校であれば、4月入学以外に10月入学も可能です。
学力試験も課されるないので、入学の意思があれば十分合格を目指すことができます。
さらに専門的な分野を学びたい場合には、そういったコースを選ぶこともできます。
総合的に考えると、通信制高校への進学が良いのは間違いありません。
まとめ
今回は、
・全日制高校と定時制、通信制高校、高卒認定試験の違い
・定時制・通信制高校卒業や高卒認定試験が、進学や就職に不利になるのか
・高校を中退した場合、高卒資格と高卒認定のどちらを取得した方がよいのか
について解説していきました。
まとめると、
・何らかの理由で高校を中退してしまった人や、全日制の高校進学が困難になってしまった場合でも、定時制・通信制高校へ進学することで高卒資格の取得を目指せる。
・定時制や通信制高校が進学や就職に不利になることは少ないが、高卒認定試験は不利になる可能性がある。
・総合的にみると通信制高校への進学が一番良い。
となります。
どの道を選択するにしても、自分の今の状況や将来の夢を考えつつ、後悔のないようによく考えて決める必要があります。
目標に向かって一歩前に進んでみてください。